わかりやすく解説【補充収縮】とは?

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改めて問われると、補充収縮ってなんなんだろう?
期外収縮と何が違うの?

そもそも補充収縮とはなにか?

補充収縮の必要性や存在意義はなんなのか

その名前の由来など、意外と知らないことが多いと思います

そういった改めて感じる疑問に対して説明をしていきたいと思います

目次

補充収縮とは?

補充収縮とは、予定の調律(タイミング)よりも遅れて出現する収縮のことをいいます

予定の調律というのは、心臓のペースメーカーをつかさどる洞調律のことをです

しかしこの司令塔である洞結節が、加齢などによる変性でペースメーカー機能を発揮できないことがあります

本来出現するタイミングで洞結節からの刺激が現れない場合、循環が保たれずめまいやふらつき、最悪意識を失ったりする可能性があります

このようなことを防ぐために、人間の心臓にはセーフティ機能ともいうべき生体の防衛反応があります

それが補充収縮ってこと?

端的にいえばそういうことになります

ですが、防衛反応というよりもこのペースメーカー機能(自動能)は、洞結節以外にも下位中枢である房室結節付近やヒス束・プルキンエ線維などにもともと備わっています

この自動能が出現する早さ、つまりは心拍数は部位によって異なります

一般的な数値として、洞結節の心拍数が50~100回/分、房室接合部で40回/分、プルキンエ線維で30回/分と言われています

下位にいけばいくほど自動能の出現頻度は低くなるということがわかります

補充収縮が通常は現れない理由

頻度は低いもののこのように洞結節より下位にも自動能は存在します

これが普段発揮されない理由は、下位中枢が自動能として脱分極する前に上位からの興奮の伝わりによって放電させられてしまうからです

だから予定のタイミングより遅いものを補充収縮というんだね

予定の周期よりも遅く出現するのが〝補充収縮〟で、早く出現するのが〝期外収縮〟です

補充収縮は上位からの刺激が来ないことによる下位の反応です

対して期外収縮は、下位中枢の自動能の亢進や器質的な理由で発生します

予定外の興奮という意味では同じですが、発生原理が異なるため補充収縮と期外収縮は異なるカテゴリに分類されています

また補充収縮の名前の由来としては、上位からの興奮から〝逃れて〟下位で発生する収縮なので

補充収縮:エスケープビード

といいます

補充収縮と補充調律の違い

補充収縮は単発で出現するもの

対して補充調律とは、補充収縮が二発以上で現れるものをいいます

補充調律が出現しているということは、上位からの興奮が本格的に発生していないことになります

この補充調律は、通常洞結節よりすぐ下位の部位、房室接合部付近での刺激で起こりやすくなっております

これを房室接合部調律(いわゆるジャンクションビート)といいます

房室結節は知ってるけど、房室接合部ってなに?

実は固有の房室結節自体に自動能があるとは証明されておりません

心房とヒス束の接合部などに自動能があると考えられています

このため房室結節調律とはいわず、房室接合部収縮とか、房室接合部調律などといいます

必ずしも補充収縮が起きるとは限らない

洞結節以外にも、刺激を発生する自動能があるというお話はしました

しかし補充収縮が絶対に働いてくれるわけではありません

え?それって怖くない?

上位の自動能に問題があるということは、下位の自動能にも問題がある可能性は十分にあります

ましてや刺激頻度の最も高い洞結節に変性や劣化が起こっているということは、下位の刺激伝導系にも変性があってもおかしくありません

またそれ以外にも補充収縮を抑制してしまう状態があります

例を挙げると、徐脈頻脈症候群などに代表される疾患で起こります

頻脈が続いている状態で、それが突然解除されると下位からの脱分極がなかなかおこらずに一時的に心停止状態となることがあります

徐脈頻脈症候群で意識消失などの症状が起きる原因がこれになります

ほかにも機械によるペースメーカーでも同様のことが起こります

一時的に早い周期でペーシングを行った後にペーシングを止めると、自己の心拍が一時的に抑制されます

これはおそらく生理的な心臓の反応と思われます

機械で無理やりペーシングによる刺激を行うと、心臓としては「そんな早い刺激は求めてないよ、抑制しなきゃ」という生体の反応だと考えられます

これをOverdrive suppression(オーバードライブサプレッション)といいます

補充調律である房室接合部調律の心電図波形について(ちょっと難しい話)

房室接合部を端とする興奮は、本来洞結節を含めた上室性の興奮です

上室性の刺激は房室結節→ヒス束→脚→プルキンエ線維を通して心室を興奮させます

これが何を意味するのか

それは上室性のどの部位で刺激が発生しても、心室側に伝わる経路は同じなのでQRS波形は同じ形でなければならないのではないか、ということです

しかし実際の、いわゆるジャンクションビートを見たことがある人はいるでしょうか

洞調律から発せられたQRS波とは形が異なっていることが多いのです

通常よりもやや幅広で波高値も高いことがあります

難しい話は興味ないっす

少なくとも心室を興奮させる下流は同じ経路を通っているはずなのに、心室の興奮波形が同じ形ではないということだよね
確かに不思議だ

これに関しては正直なところ筆者も正しい回答をすることができません

ただ、同じ上室からの刺激とはいえ、心室に伝わる経路が異なっていたり、伝導障害などがありそうだということは言えそうです

まとめ
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