ここでは臨床で働く看護師さん向けなどに、心電図を読むために必要な考え方や心構えなどについてお話します
心電図って波形がたくさんあって苦手
臨床の現場で働く人にとって、なんとなく心電図が苦手な人は多いと思います。どこまでわかっていれば私は心電図が見れる!といっていいのかわかりませんよね。医師と心電図について会話ができるようになれば心電図が見れるといえるのでしょうか。それは一緒に働く医師のレベルに左右されてしまうので、見れるの基準が相対的です。では、心電図検定に合格すれば見れるといえるのでしょうか。自信にはつながるかもしれませんが、いくら試験に合格してもそれは知識があることの証明にしかなりません。運転免許の資格を持っている人が運転技術に優れていることの証明にならないことと同じですね。
そんなあいまいな価値基準にとらわれるより、ただ日ごろから興味をもって心電図と接することを意識するべきです。〝見れるか見れないか〟よりも〝好きか苦手か〟の方が大事だったりします。
心電図は勉強する順番を間違えてはいけない
どんなことでも基礎が大事だといいますが、こと心電図に関してはあてはまりません
いえ、もちろん大事であることに違いはありませんが、基礎から順番に一歩一歩学ぼうとしなくてもよいのです
確かに心電図の基礎の一つである正常値は臨床でも必要です
ですが心電図上PやQRSの波の高さを正確に記憶して、それを役立てる機会は頻繁に訪れるでしょうか
引用元 看護Roo!
QRS波の波高値は心筋の起電力を表しており、心筋肥大などが考えられます
普段から心電図を見る機会があれば、ぱっと見て〝なんとなく波高が高いな〟くらいはわかるかもしれませんが、最初はそれくらいでいいのです
P波の波高値は心房の負荷所見となるので僧帽弁閉鎖不全症などの判断材料にもなりますが、その数値を覚えておくよりも〝なんとなく形が変だな〟とか〝大きいな〟程度の理解でむしろ十分です
引用元 Wikipedia
静止膜電位やNA-Kポンプについてなどもってのほかです
心電図のことを調べていくと、知識が深くなって心筋の活動電位などの細胞レベルの話に行き着いてしまいます
これらの原理は、深いところでは実は解明されていないことも多いため、うかつに開けてはいけない扉だったりもします
抗不整脈薬の作用機序を知るためには、活動電位やイオンチャネルについて知っておくべきことはありますが、臨床に役立つための勉強としては後回しにするべきでしょう
心電図は、自分が興味をもった分野から勉強すればいいと考えます
実際の臨床現場で出会った心電図や疾患で気になったところから調べた方が、知識と経験がより強固に結びつくはずです
心電図に固執しすぎてはいけない
先ほど話に触れたQRSの波高値異常を例にお話しします
心電図のQRS波高が高い所見は、確かに心筋肥大の可能性を示唆します
ただ心筋の厚さを知るには、エコーの方がよほど正確にわかります
エコーなら具体的に左室の中隔が厚いのか下壁が厚いのか、どれほどの厚みなのかまでわかるので計測することができます
また、心電図上でQRS波高の低下は胸水や心のう液の増加などの可能性を示唆します
しかしこれも、レントゲンやCTで確認した方が確実です
より正確に判断できる材料があるのに、わざわざ心電図だけで判断するべきではありません
心電図は身体の異常を知るための検査の一つにすぎないのです
心電図のみに固執して疾患を判断したり、鵜呑みにしないようにするべきでしょう
結局心電図以外の勉強も必要
繰り返しますが、心電図だけで疾患を判断する状況は限定的です
心電図検査が必要となるような内科・循環器科・心臓血管外科疾患では、採血・エコー・レントゲンなどの各種検査も同時に必要となります
問診や聴診などの所見、既往歴の有無やバイタルの確認なども同様です
それらを総合的に判断することで初めて疾患の判定や進行具合を知ることができるのです
心電図を学びたいと考えている人の多くは、必然的にそのほかの検査にも精通していることが理想と考えられます
さらにいえば解剖生理や疾患・病態についての知識にも理解が必要となります
心電図が得意とするものを理解する
心電図が得意な疾患は、虚血性心疾患と不整脈疾患となります
心筋虚血が心電図上のST部分に影響を及ぼします
それも最も早い所見となるので、心臓カテーテル検査において心電図のモニタリングは重要です
心筋梗塞の最終的な確定診断は採血で心筋逸脱酵素の上昇でもって確定されます
しかし採血の結果を待ってから次の行動に移るのでは遅すぎるので、心電図は強力な虚血性心疾患の判断ツールとなるわけです
また、特に不整脈疾患に関しては、心電図の独壇場といっても過言ではないほど、心電図が得意とする分野です
心電図は心臓の電気的な興奮を表しています
単に脈が遅いか早いかだけではなく、心房と心室がどのように連動しているのかもわかります
心房と心室の連動性がわかれば、房室結節能の評価も可能となります
心電図で何を知ることができるのか、こんな風に考えたら心電図に少しでも興味がわいてくるのかもしれませんね
とにかく数をこなす
人によっては数だけ見ても意味がない、という意見もあると思います
確かに何をどう見たらいいのかわからない、興味もない状態でただただ心電図とにらめっこをしても、なんの益もないかもしれません
しかしながら、もし心電図に触れる機会があるならば、まずは積極的に見にいってほしいものです
どう見たらいいのか、どうしたら興味をもってもらえるかを、このブログを通して皆さんにお伝えしたいと考えています
まとめ
- 心電図は勉強する順番を間違えてはいけない
- 心電図に固執しすぎてはいけない
- 結局心電図以外の勉強も必要
- 心電図が得意とするものを理解する
- とにかく数をこなす